03/08/2026
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山のおとも vol.18 「海と山の道」
ある年の夏、鳥海山に登った。
秋田側の登山口、鉾立から少し歩いて展望台を過ぎると、徐々に視界が開けてくる。目の前には巨大な山塊がどっしりと横たわっていて、山の質量を圧倒的に感じた。ああ、これが鳥海山なのだと思う。
驚くべきは、序盤は石畳の道が続いていることだ。これは誰かがここに石材を運んで道を整備したということにほかならない。この石畳の道はしばらく続いた。何とありがたいことか。
後ろを振り返ると、昨日温泉から夕陽を眺めた日本海が見えた。
鳥海湖を過ぎた分岐からは、だらだらと続く千蛇谷の道を休み休み登った。
前泊した登山口の宿が物珍しく、しかも我々の貸切だったためつい夜更かししてしまい、朝寝坊して出発が遅れた。日はとっくに高くなっていた。景色に歓声を上げていたのは最初だけで、以降は2人ともほぼ無言で登った。じりじりと照りつける太陽が容赦なく体力を奪っていく。
8月の中旬、おそらく最も暑いさなかに鳥海山に登っている我々。とにかく暑い。しんどい。
やっとの思いでこの日泊まる山頂肩にある御室小屋にたどり着いた。荷物を小屋に置いて山頂をめざしたら、アルプスもびっくりの岩陵帯だった。
山頂からの景色は、日本地図を斜め上から見下ろしているようで、海岸線に散らばったミニチュアのような風車がかわいらしかった。
登頂したし、もうあとはだらだらするだけのお楽しみタイムである。小屋泊の寝巻きに着替え、缶チューハイをちびちび飲みながら小屋の前のベンチにただ座っていた。
そこからは眼下についさっき登ってきた道と、その先に日本海が見えた。
あの道を登ってきたんだなあ、と思った。そしてその先に、海が続いていることが不思議に思えた。
水平線の少し上には雲の層があって、太陽がそこに吸い込まれていった。と思ったら、層の下の部分から再び太陽が出てきた。まるでご来光を逆さから見ているような不思議な光景である。
おもしろがっていたら、太陽はどんどん沈んでいき、水平線の下に今にも潜っていきそうな勢いだ。あたり一面、空が真っ赤に染まっていく。
と同時に、今度は海面に光の筋があらわれた。水平線の向こうに見える島へと続く、今だけ現れる幻の光の道のように見えた。
調べてみたら、飛島という山形の島らしい。
今、我々は山の上にいるけれども、ここは海にも繋がっている。
所詮、地球の隆起を足で少しなぞったに過ぎないのだ。
山から海へ、海から島へ。
そしてまた海を経て陸に、山に。
道が続いている。
文:織田紗織
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